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SANDMAN - SILLAGE (JP)
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SANDMAN - SILLAGE (JP)

PROLOGUE – SILLAGE Read this story in EN, DE, FR, VN, HU *************************************** パリ (Paris)、1949年6月のある夜 ル・ムーリス・ホテル (Le Meurice Hotel) ― 図面には存在しない一室 ***************************************** 六月の夜風は、震えるほどの寒さではない。 だがその部屋の窓を開けようと思う者はいなかった。 白檀の香り、古いアルマニャック、そして階上から垂れてくる怠惰なサクソフォンの旋律。 部屋はそれらによってすでに「火が灯っていた」のだ。 彼女は、まるで前世ですでにここにいたかのように、部屋へと足を踏み入れた。 「マドモアゼル・エメ?」 後方からレセプションの声が響いた。 だが彼女は振り返らなかった。 ただ小さく頷いただけ。 まるで“招かれた客”ではなく、“導く者”が身分を明かされたかのように。 部屋には、赤いベルベットの椅子、革張りのテーブル、そして一枚の大きな鏡があった。
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